2019/12/03
この記事は「Board Game Design Advent Calendar 2019」の3日目の記事として書いてます。
どうも、サークル「コップレジェンド」の翠丸です。
地方でゲーム制作していまして、近年の作品は
「精霊回路ドライヴEXE」「勇者アーキテクト2B・2R」「ポプボブ」辺りです。
その精霊回路ドライヴEXEの完全版の情報解禁を先週したばかりですが、それに収録する新カードのテストでは様々な効果を考えては没になっていきました。
その没になった中の1枚に、右のカードがあります。
地ユニット
0★:[場札]の一番上のカードが[緑色のカード]の場合、[1★]獲得
このカードが何故に没になったか?
その没にどういう意図があるのかをお話したいと思います。
まずこの問題を考えるにあたり、精霊回路ドライヴEXEのルールを知る必要があります。
簡単に要所だけ説明しますので、少しだけお付き合いください。
プレイヤーはゲーム開始時点で、様々な能力を持つ“ユニットカード”を選んでパーティを編成します。
没になったカードもこのユニットカードの1枚です。
そしてゲーム中は0~4の数字×4色の“回路カード”を、色や数字が同じになるよう、いわゆるUNOのようにプレイします。
同じ数字なら色が異なっていても複数枚をセットでプレイすることができます。
そうやってプレイしたカードの色と、自分のユニットカードの色が一致すればそのユニットが攻撃を行います。
またカードをプレイすることで魔力チップを獲得できます。
魔力チップは、消費することでユニットの能力を発動することができます。
以上、かなり端折っていますがこれらのルールを踏まえて、
没になった能力について考えていきましょう。
問題のユニットは、魔力チップを消費せずに逆にある条件下で魔力チップを獲得することができる能力です。
その条件は「場札の一番上のカードが緑色」であること。
能力を発動できるのはカードをプレイした後なので、
これはつまり自分の手番で【緑色のカード】を(最後に)プレイしたことを意味します。
それはまた、このユニットが攻撃を行ったということでもあります。(【緑色のカード】をプレイ→【地属性ユニット】が攻撃)
このユニットが攻撃できる【緑のカード】をプレイすれば、追加で魔力も得られるという、
一見すると理にかなった能力のように思います。
※ここで精霊回路ドライヴに詳しい方なら
「結果的にノームとほぼ同じ能力だから没になったのでは?」
という回答に行き着くかもしれません。
それは半分正解で、その差別化をできるかどうかを検討中に今回の正解にぶつかりました。
重要なのは、「同じ数字をセットで出せる」こと、そしてこのゲームが「協力型」ということです。
例えば自分が【地属性ユニット】(緑)の単色パーティーを使っていたとします。
場札が【緑3】の状態で手番が回ってきて、【緑2】【赤2】の「2の数字2枚セット」をプレイしても、
【火属性ユニット】(赤)がいないため【赤2】をセットでプレイすることは無駄に見えます。
では次手番のプレイヤーが【火属性ユニット】(赤)の単色パーティーだった場合はどうでしょうか。
次手番のプレイヤーは、攻撃するために【赤色のカード】をプレイしたいはずです。
しかし場札が【緑3】だった場合、同じ数字の【赤3】か、
または【緑2】【赤2】のように手札に緑赤の数字セットが揃ってないと
次手番のプレイヤーは【赤色のカード】をプレイできません。
(実際のゲームには2色の色を持つ特殊な回路カードがありますがここでは触れません)
もし前の手番で自分が【緑2】【赤2】とプレイしていれば、
場札が【赤2】となり、次手番のプレイヤーは【赤色のカード】であれば数字を問わずプレイすることができます
攻撃も発動し、ゲームを有利に進めることができます。
このようなプレイは
「自分に直接利益はなく無駄のようでも、次のプレイヤーの助けとなるプレイ」と言えます。
感覚的には、次のプレイヤーをアシストするというか、パスを出すようなイメージですね。
このゲームではそういったプレイヤー間の連携を取れたかどうかが勝敗を分ける状況は多いです。
ここで改めて問題のユニットの能力に戻ります。
効果を得るためには場札が【緑色のカード】である必要があり、
上記のような【緑2】【赤2】といった次プレイヤーへのパスをするプレイと相容れない、
つまり「次手番のプレイヤーへのアシストを犠牲にして発動する能力」であると言えるのです。
もちろんこの能力に限らず、ゲームの状況次第ではそういったプレイをすることはあります。
それでもユニットの能力という形でそれをプレイヤーに提示することは、
制作者が能動的に協力要素を(部分的に)否定することにもなり、
それはあまりにもゲームにそぐわないと考えたので、最終的に没としました。
もし精霊回路ドライヴEXEが対戦ゲームだったら、このカードは没にならなかった可能性があります。
今回は協力ゲームならではの考え方です。
ただしあくまで独自視点で、これが協力ゲームの方向として正しいかどうかはゲームの内容次第だと思います。
他にも、同様に協力ゲームであるために私が実装しないと決めている能力系統として「スーサイド」があります。
ざっくり言うと「負けるリスクが大きくなる代わりに効果は強力」という能力系統です。
これを汎用的なゲームの効果で説明すると「自分のHPを削って敵に大ダメージを与える」といったものになります。
対人戦であればハイリスクハイリターンのカードとして検討に値する効果です。
しかし協力ゲームでは事情が異なります。
このスーサイドな効果を連発するプレイヤーがいると、全員がそのリスクを負うことになり、
最悪そのリスクが原因でプレイヤー側全員が敗北ということもあり得ます。
ゲームは勝っても負けても楽しい、が理想ですが、
ではこういう負け方をした人たちが果たして楽しかったかと問われると多分楽しく無いでしょうし、
そのハイリスクな行動を取り続けたプレイヤーと二度と協力ゲームを遊ぼうとは思わないと考えるかもしれません。
しかし、これはそのプレイヤーの責任だけでなく、
そういう行動ができてしまうゲームの責任でもあると考えます。
それもルールの抜け穴で「できてしまう」という類いの話でなく、
効果として実装するというのは、「やってもいい」という制作者のお墨付きでもあるのです。
だからこそ、一人のやんちゃな行動でゲームが壊れてしまう可能性があるスーサイドは実装しないと、
少なくとも精霊回路ドライヴEXEでは決めています。
ということで、協力ゲームならではのルール没理由のお話でした。
雑な畳み方になりましたが、正直なところ“協力型”というのはゲームシステムの外側にあるものなので、
実際はシステムによってケースバイケースです。
また、ゲーム制作全般に言えることですが、何を善し悪しとするかは論理的というより感覚的なものかなと思います。
とりあえず迷ったら、
「どうすればプレイヤー全体の楽しさの総量を上げられるか」
を考えてみる、それが協力ゲーム制作の要だと考えます。
あ、なんだかいい感じにまとまった気がしますね。
それでは、良いゲームライフを。