2017/12/08
この記事は「Board Game Design Advent Calendar 2017」向けに書いてみた記事です。
と、その前に、当サイトは今年の夏ごろリニューアルしまして、
その際ほとんど更新してなかったブログを外してしまったので
こういう記事を書く場合ページ置くしかないのが不便ですね。
閑話休題。
どうも、サークル「コップレジェンド」の翠丸です。
地方でゲーム制作していまして、代表作は
「精霊回路ドライヴ」「勇者アーキテクト(2B・2R)」「じゅげむとショゴス」辺りです。
ご存知の方はピンとくるかもしれませんが、 上記代表作は全て協力ゲームとなっています。
ということで、今回協力ゲームについて話してみようと思います。
ちなみにこの話における協力ゲームは、「全員が一致団結して勝利を目指すゲーム」として話を進めます。
「協力するけど陣営に分かれてのチーム戦」だったり、「1人が正体隠匿しているのを協力して探す」など、
実質の対戦要素があるものは該当しないものとします。
また、ミステリウムのようにプレイヤーが一致団結はするものの、ゲームマスターのように
「明確に立場が異なるプレイヤーが必要なもの」も今回の話では触れません。
(これらはあくまでこの話に限ったことで、協力ゲームの定義の言及ではありません)
つまり、「プレイヤー(全員の立場が同じ)vsゲームシステム」という対決構図のゲームについてのお話です。
ではいくつかゲームを例に挙げてみましょう。
「協力ゲーム三銃士を連れて来たよ」
「協力ゲーム三銃士?」
「パンデミック。世界規模で拡散するウィルスの脅威に立ち向かおう!」
「ドラスレ。ファンタジー世界でパーティー組んでドラゴン倒す高速RPG」
「成敗。のさばる悪を何とする、天の裁きは待ってはおれぬ。闇に裁いて仕置する」
ということで、これら3つの代表的な協力ゲーム。
いずれも舞台設定とプレイヤーの立場がはっきりしていて、
プレイヤーがどういった立場で協力し合い、何に立ち向かっているのかが明確です。
これはまさにロールプレイングゲーム。
ゆえにプレイヤーはその世界観に没入でき、
世界を救うため、悪を倒すためといった、勝利に向けたプレイヤー同士の一体感が形成されます。
その一体感から勝利に至ったときの達成感は非常に大きく、ドラマチックになります。
協力ゲームは、プレイヤーが協力して作り上げる「物語」であり、
参加するプレイヤーを世界を救う英雄という「役割」に変換するシステムなのです。
そして「物語」の内側から「役割」を持った一員として、
ストーリーを紡ぐ過程を共有の体験として楽しむことこそが協力ゲームの醍醐味と言えます。
近年人気のパンデミックレガシーやタイムストーリーズ、Exitなどは
こういった物語性や共有体験をより前面に打ち出していると言えるでしょう。
1回しかプレイできないという大きなデメリットを抱えながらも好評を博しているのは
共有の体験という価値観がかけがえのないものとして評価されている結果と言えます。
もう一つ大事なのが、物語を支える「ドラマチックな収束性」です。
先に挙げたゲームでいえば、
ドラスレは最後に凶悪なドラゴンと最終決戦が待ち受け、
成敗は最後に一人一殺で悪党に仕置きをしかけます。
パンデミックは場面展開は無いですが終盤の世界滅亡への加速度がすごく、
勝つか負けるかの絶妙なラインの収束性を持っています。
「規定ラウンドが終わったら」や「誰かが一定点数超えたら」などといった、
対人戦のゲームでは当たり前の区切りとしてのゲームの終わりでなく、
命運をかけた終盤の怒涛の展開、ドラマチックに収束していくクライマックスが、
勝利の達成感やカタルシスを伴って協力ゲームの物語性を高めてくれます。
ロープレイングといえばやはり最後に最大最強の困難が立ちはだかるものです。
対人戦のゲームでも流れや手次第でドラマチックな展開は生まれることはありますが、
協力ゲームはなにせ敵がNPCなので、ともすれば単調なままゲームが終わってしまうので、
物語性に重きを置く協力ゲームであればこそ、そういった仕掛けを意図的に組み込むことも重要になります。
ということで、協力ゲームに重要なのは
「物語性」
「ドラマチックな収束性」
というお話でした。
最後に蛇足的ですが、協力ゲームの難易度についてです。
上に挙げた協力ゲーム三銃士の難易度、
あくまで個人的な勝率ですが、パンデミックは普通の難易度で勝率7~8割くらい、
ドラスレは1割あるかどうか、成敗はプレイ回数が5回くらいですが完勝は0です。
そう、協力ゲームってどれもこれも難易度が高いんです。
対人戦と違い、敵はNPCなので強さのハードルは固定です。
ただアブストラクトみたいに完全情報だと詰将棋になるので実際はランダム性が組みこまれますが、
このランダムもかなり運が良くないと超えられないハードルに設定されていることが多いです。
代表的な協力ゲームがそんななので、「協力ゲームは難易度が高いのが当たり前」という風潮があります。
そのあおりで精霊回路ドライヴもよく「協力ゲームにしては難易度低い」という評を目にします。
(初版でその評を受けてハードボスを追加しました)
こういった協力ゲームの難易度の高さの理由としては、
・そう簡単に勝てないからこそ挑み甲斐がある
・簡単に勝てちゃう ≒ 歯応えのないゲーム
・そもそも前述のとおり過程の「物語」に価値があり、相対的に勝利そのものの価値が高くない。
・個人の「役割」ごとの目標達成というか「仕事した感」の満足感
辺りが挙げられると思います。
が、
「そこそこ勝てる協力ゲームがあってもいいじゃない!」
と思ったりもします。
誰一人敗者となることのない、全員が勝利する幸福なディストピア。
さぁ皆さんも魅惑の協力ゲームの世界へ足を踏み入れてみませんか?
心の声『ここまで話しといてなんだけど、HANABIとかザ・ゲームってあんまり上の条件にあてはまらない…』
「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」